「理念」とは何か？例と英語訳を交えて簡潔に解説

 この記事では、「理念」という用語に焦点を当てます。日頃よく耳にする「○○という理念」は、その深い意味を理解しにくいこともあるでしょう。

ここでは、その意味、使い方、同義語、そして英語での相当語について明確に説明します。

☆簡単にいうと、「理念」とは……

・読み方：理念(りねん)

・意味：物事に対する一般的な認識や、それを言葉で表現した内容

・同義語：観念、概念

・英語訳：concept(基本的な思考や物事の核心)

「理念」の本質を深く理解する

理念：物事の共通認識やその表現

「理念」の意義を詳細に

「理念」とは、物事に関する共通の理解を示します。

具体例を用いて解説します。

●猫の「理念」について

1匹の猫を指して、「これは何ですか？」と尋ねられれば、どんな種類の猫でも「猫です」と答えられます。

しかし、猫のサイズや色は多岐にわたります。

それでも、「これは猫だ」と断言できるのは、「猫とはこのようなもの」という共通の理解があるからです。

「○○とはこれだ」という理解が、理念です。猫だけでなく、「正方形とはこれ」「愛情とはこれ」というように、さまざまな対象に対して理念が存在します。

ただし、理念の中には簡単に説明できるものとそうでないものがあります。

「正方形の理念」ならば、「4つの等しい辺を持つ図形」と表せます。

これに合致するのは正方形のみです。

一方で、「猫の理念」を語るのは複雑です。

例えば、「四足歩行で、ニャーと鳴く」とは言えますが、それだけでは不十分で、多くの特徴があります。

例外もあり、鳴かない猫も猫です。

このように、「理念」とは、通常、言葉で表現されるものの一般的な説明です。

通常は「これくらいのこと」としか説明できない事柄が、具体的な言葉で表現された時、理念が整理されたと言えます。

たとえば、「リモートワーク」という言葉が登場し、「オフィスに行かずに働く人々」という概念が具体化されました。

リモートワークの言葉が広まる前、人々は異なる呼び方をされていましたが、今では共通の表現となりました。

理念が言葉にまとめられることで、それが指し示すものについての考えが深まります。

リモートワークの普及により、リモートワーカーへの支援策が検討されるようになりました。

以前は在宅勤務やテレワークなどの呼称がありましたが、リモートワークという言葉のおかげで、対象者への具体的な支援が可能になりました。

逆に、言葉で定義された事柄が時代の流れで不要になると、その「理念」も消失することがあります。

例えば、オンライン決済の普及により紙幣の使用が減少しました。

これは、紙幣の使用という理念が薄れ、オンライン決済という新しい理念が生まれたことを意味します。

このように、時代によって変化する理念も存在します。

紙幣使用：物品やサービスの支払いに紙幣を使用すること。

「理念」の使い方

①新鮮な海産物を食べたら、海産物に対する理念が変わるかもしれない。

②多くの用語が議論されるので、理念を整理することが重要です。

③新任の経営者の話は理念的で、具体的な戦略が見えなかった。

④父は、理念図を用いて自分のプロジェクトの概要を説明した。

⑤彼はアスリートとしての既存の理念を打ち破り、自らビジネスを展開していく。

これらの例文のように、「理念」は日常的に使われます。

①では、「海産物とはこういうもの」という考えを「海産物の理念」としています。

また、②では「抽象的な概念」という意味で使用されています。

この文脈では、討論されているさまざまな話題について、大まかな概要を整理しようとする様子が描かれています。

例③では、「言葉にはできるが実際には具体性が欠けること」を「理念的」と表現しています。

つまり、口に出せるけれども、実際に行動に移すのは非現実的なことを意味します。

たとえば、「早起きは理念に過ぎない」と言う時は、「早起きという行動は理解できるが、実際には私には難しい」というニュアンスになります。

④の理念図は、話の要点や事柄間の関連性を図示したものです。

つまり、理念としての思考内容を図に表したものです。

④の「理念図」では、製品やサービスの流れや利益の出し方などが示されていることでしょう。

⑤の「既存の理念」も一般的なフレーズです。

既存の理念とは、多くの人が共有している考え方を指します。

例文では、アスリートはスポーツに専念するべきだという通常の見解を覆し、自らビジネスを開始する様子を「既存の理念を打ち破る」と表現しています。

「理念」の類義語

「理念」には次のような類義語があります。

・概念：物事に対する一般的な思考

・観念：物事に対する個人的な考え

これらも、物事に対する考え方を示す言葉ですが、「概念」は多数の人が共有する考えを指し、「観念」は個人の主観的な考えを指します。

理念と異なる点は、「概念」や「観念」が必ずしも共通の基準ではないということです。

「理念」は他の人とある程度共有できる考えとして位置づけられています。

理念は言葉を基にしているため、人によって大きく異なる考えになることはありません。

もし言葉の意味が人それぞれに異なっていたら、コミュニケーションは成立しません。

そのため、「言葉が指し示すもの」としての「理念」は、概念や観念よりも客観的な性質を持ちます。

「固定理念」か「固定観念」か？

「固定理念」と「固定観念」という言葉がありますが、正しいのは後者です。

「固定理念」は誤用とされます。

「理念」とは、物事に対する「共通の」思考内容を指すため、多くの人が「○○とはこういうもの」と感じていることが前提です。

そのため、元々「理念」は固定的な特性を持ちます。

したがって、「固定」という言葉を加えるのは不適切です。

一方で、「固定観念」は正しい表現です。

「固定観念」は、どんな状況でも変わらない信念を意味します。

「観念」は個人の考えを指すため、万人に共通する観念は存在しないので、一つの観念だけを正しいと見なすことが「固定的」とされます。

「理念」の英語訳

「理念」を英語にすると、“concept” となります。

例文は以下のとおりです。

●例文 Our science teacher explained the concept of gravity to us. (科学の先生は、重力の理念について私たちに教えました。)

例文での「重力の理念」は、「重力とは何か」という問いに置き換えると理解しやすくなります。

日本語での「コンセプト」

「コンセプト」という言葉は日本語でもよく使われます。

例えば、新しい家具のデザインを発表する際にデザイナーが「デザインのコンセプト」について説明することがあります。

ただし、英語の “concept” と日本語の「理念」には微妙な意味の違いがあります。

「コンセプト」は、物事に込められた意図やメッセージという意味合いで使われることが多いです。

家具のデザインの例では、

「この家具にはこんな思想が込められている」ということが「家具のコンセプト」となります。

このように、「コンセプト」は個人の主観に基づくものである一方で、「理念」は多くの人と共有できる、より客観的な概念です。

まとめ

ここまでで「理念」という言葉についての解説を終えます。